大輪結び-tairin musubi-

 この結びを初めて見たのは、東京の職人さんを紹介した一冊の本でした。飾り結びを専門に作る職人として、故篠崎順氏とその作品が紹介されており、この菊のご紋のような結びに出合いました。
 ある時、曼珠院の写真集の中に美しい16枚菊の欄間を見つけました。その瞬間この菊を紐で結びたいと思い、私の頭の中に篠崎氏の結びが浮かびました。
その結び方は、川島美園先生の本に「大輪結び」として取り上げられています。花弁の数はいくつにでも増やすことができるというもので、数が増えるごとに中心の輪も大きくなっていきますが、徐々に菊の紋章のような重厚感が生まれます。
 菊が皇室の紋章になったのは鎌倉期以降で、明治4年(1871年)に皇室以外での菊の花紋の使用が禁止され、花弁の数は、天皇家は16花弁八重菊、皇族は14花弁裏菊と定められているそうです。花結びにも八重菊結び、裏菊結びという名の結びがあります。
 実際に結んでみますと、花弁の数が増えるごとに締めることが難しくなり、きれいな形を作るのに最初は苦労しましたが、16枚の花弁がきちんとおさまると、背筋がピンと伸びるような心地よさを感じました。


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